社会の高齢化が大きな問題となっています。高齢化のため以前はあまり目立たなかった病気がクローズアップされるようになりました。その一つに認知症があります。 認知症の中には多幸症といわれるように、周囲に対しあまり関心を示さずずっとニコニコして過ごしている状態の方がいます。このことを考えると、認知症は人間の障害や死の恐怖に対する防衛のひとつではないかとも思えてきます。 ただ現代ではその状態に至るまでのさまざまな行動に付き合わされる人たちにとっては大変な負担になってしまうため、問題となっているのです。 |
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よく相談にこられる方がいわれるのは、夜寝なくて困る。うろうろするので目が離せない。同じことを何度も言う。物がなくなったと騒ぎ自分たちを疑う。昼夜かまわず大声を出す。他には失禁、便遊び、汚物をため込むなどさまざまなことがらがあります。 これらのことに一つ一つ対応することは非常に大変なことです。 ついつい声を荒げて「いいかげんにしろ」といってしまうこともしばしばあります。でもそれで収まるものではありません。本人はなにも悪気をもってしているのではないからです。 |
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認知症は認識力、記憶力、判断力などが非常に低下しています。また時間の流れがあいまいになり、現在と過去がごちゃ混ぜになっています。ここに今現在の記憶保持ができなくなっているとどうなるでしょうか。 過去の体験が今として認知されるため、過去の日常動作を再現しようとして行動してしまいます。そのため混乱が起きるのですが、本人には何の悪気もないのです、当たり前のことを当たり前にやろうとしているだけなのです。 |
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家族にしてみれば、24時間いつも目が離せない状況ですね。 夜は寝ずの番をしないと不安だとか、粗相をしたり、大便を弄ぶのできたないからといって、絶えず付いて回り神経をぴりぴりさせたり、時にはいうことをきかせようと暴力を振るったりしてはいませんか? 全て長続きはしませんし、状態の改善にはなりません。 大切なことは、行動の意味、理由を理解してあげることです。 |
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皆さんは「ボケたね」といわれたらそれをすぐに受け入れられますか? 「なんでやねん」と返せる間はいいのですが、本当にボケ始めたときはその余裕がありません。 物盗られ妄想 大切なものや日用品など何をどこに置いたか分からなくなったことがしばしば続くと、どのように考えるでしょうか。自分がボケて分からなくなったということは認めることが怖いので、はなっから否定してしまいます。そこから《誰かが盗った》になって、《泥棒がいる》・・・しょっちゅうなくなるので近しい人だ・・・《嫁? 大家? 》そうだそうに違いないと自分を納得させ安心してしまいます。だから具体的な人物がターゲットになりやすく攻撃を受けるのです。 徘徊など あなたが10年前の記憶で現在を行動したらどのようなことが起きるでしょうかさまざまな混乱が起き、強い戸惑いを感じることでしょう。 認知症が進むとこのような現象がよく起きます。過去の記憶の中で現在の日常を送ろうとしますが、その不都合さを理解できないため、ちぐはぐな行動となってしまいます。それが周囲にとって問題行動と映ってしまうのです。 失禁・弄便など 痴呆になっても全てが分からなくなるわけではありません。失敗などに対しての羞恥心はあります。だから粗相したときに自分で何とかしようとする気持ちはとうぜん残っているのです。 粗相した⇒何とかしなければ⇒行動がまとまらない⇒困った⇒隠してしまえ⇒汚れた下着はたんすの奥などへしまわれてしまいます。 便がでてしまった⇒拭かなければ⇒しかしティッシュやぞうきんなどには結びつきません⇒どうしよう⇒手で拭いてしまいます⇒手が汚れた⇒きたないなぁ⇒壁などで手についたうんこをぬぐったりします・これが弄便行動のように映るのです。 皆さんが赤ちゃんの行動や失敗を理解しているように認知症の行動も理解してあげてください。理由が分かればその付き合い方も変わってくると思います。 |
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高齢者は、身体症状、生活、環境、心理などをもとにさまざまな精神症状が出現します。その中でも脳の老化から生じる器質性精神障害は痴呆を主症状とし、アルツハイマー型認知症、脳血管性(脳梗塞・脳出血後遺症)認知症、混合型認知症などに分けらます。 薬の中には認知症の進行を少しでも遅らせる効果があるものも開発されていますが、一度ダメージを受けた脳細胞そのものを元通りにすることはできません。 現代医学ができることは残った能力を引き出すことです。 残存する個人の能力の開発、リハビリテーションを行うためには精神症状を安定したものにしなければなりません。被害妄想や暴力などがありますと対応が困難なものとなってしまいます。施設利用も断られることがときにあります。 これらの問題行動をいかに改善し、早期に適切なリハビリテーションへと導くことが私たち精神科病院の役割です。 |
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ここに上げた行為全てを理解しても、実際に認知症と付き合っていくことは大変なことだと思います。家庭内で見ていこうとしても交代してくれる人は限られているため、いくら頑張ってもすぐに限界に達してしまうでしょう。 家庭が破綻してしまう可能性もあります。 そうならないためにさまざまな医療的・福祉的サポートがあることをご存知ですか? 核家族化の進んだ現在、昼間は高齢者が一人で過ごすことが多くなっています。介護の手段がないために仕方なく施設入所されていた方がほとんどではなかったでしょうか。現在では問題行動など上記にあげた症状は薬物にて改善し、時には入院を考えますが、それら以外であればなるべく在宅にて生活していけるようにと介護保険による支援事業が平成13年4月にスタートしました。 基本的に65歳以上の方であれば介護保険の対象となります。 まず役所の福祉課で介護認定の申請をしてください。訪問調査の後、1ヵ月ほどで自立、支援、介護1〜5などの認定結果が届きます。 支援以上であれば補助が受けられ、ケアマネージャーと各家庭の実情に合った介護計画をたて、ホームヘルパーの派遣やデイサービス、ショートステイ、施設入所などのが利用できます。 これらの支援サービスを組み合わせることによって、家族の負担を少しでも軽くし、家族全員が一緒に暮らしていけることが認知症の進行を緩っくりしたものに変えることにつながっていくことでしょう。 |
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